今

今が愛おしいと思える人がいったいどれくらいいるのだろう？
過去を懐かしみ、未来を夢見て・・・今を見るより、はるかに簡単なことだと思う。

愛しい過去が「今だった時」、どれだけ大切にその瞬間を過ごせたのだろうか？
すべては移り変わっていくことだけが真実である中で、今にしがみつく必要はないけれど、今しかその手にはないということを忘れてしまっている人も多い。
残念だと思う。今しか変えられないのに。未来だってあるかわからないのに。

『今生の別れ』という言葉を、もう２０年以上、去年亡くなった父の口から聞き続けた。
彼はこの言葉を使うのが大好きで、嫌味なくらいいろいろな場面で用いた。
今思えば、この言葉も悪くない。
また会える、次があると思って疎かにしてしまう時間がある。
いつ最期が来るのか誰にもわかないし、次はないかもしれない。
だからこそ、今を全力で味わう。
人との時間も、目に映る景色も、前を必死に向こうとがんばっている自分も。

旅立つ時が来たら、すべてが愛おしい時間であるように生きる。
生きる。ただ生きる。今のせいで、未来に悔いを残さないように。
きっと素晴らしい気づきに出会えるはず。